気象庁物語(古川 武彦)

気象庁が主人公の物語で気象予報の専門知識を深堀できる本


著者の古川武彦さんは、気象研究所台風研究部長、気象庁予報部予報課長、札幌管区気象台長などを歴任され、現在は「気象コンパス」代表として数多くの気象関連書籍を執筆されています。

古川さんの著書の魅力は、圧倒的な知識と豊富な現場経験にからくる説明のわかりやすさです。

資格試験の勉強では、どうしても試験用の重要ポイントだけに偏った断片的な理解になりがちです。この本では、気象庁の歴史を辿りながら「学科(専門)」を体系的な流れとして深く理解することができます。

例えば、現在はGPS搭載のラジオゾンデで行われている高層気象観測。昭和38年に古川さんが潮岬測候所で観測にあたっていた時代は、送信されてくるモールス信号を計算尺で弾き、気球の高度や風を算出していたといいます。処理がすべて自動化された現代では培いにくい、「データに対する鋭い感覚」を養う現場がそこにはありました。

このほか、真冬の富士山頂へのレーダー設置秘話、数値予報を実現させた気象とコンピュータの発展の歴史、民間参入(気象予報士や気象予報会社など)の舞台裏まで幅広く網羅されています。気象庁の軌跡を題材にした、上質なビジネス書としても楽しめる一冊です。

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